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神保町花月「かあちゃん、スターになったよ」千秋楽の感想

行く予定ではなかったのですが、初日に行ったお友達が「絶対見た方がいい。千秋楽の当日券私が並ぶから」と、わざわざチケットを私の分まで買ってくれると言うので行く事に。
私の好みを知り尽くしてる人間がそこまで言うなら…。でもあらすじを見た限りではなんかほのぼのしてそうで私好みでもないのにな、と疑問を抱きつつ観劇。
…もう、今もまだ興奮冷めやりませんよ。まず間違いなくDVDにするには厳しい内容なので本当に行ってよかったです。
これを書いたのがレギュラーの松本くんと言うのも、なんだか凄いです。「カーテン」の南キャン山ちゃんもそうだけど、普段とのギャップがありますね。
あらすじだけ見て行った人はまずひっくり返って、最後背筋がぞくぞくして終わったと思うなあ。
友人とも話してたんですが、楽しく遊園地でメリーゴーランドとかに乗って遊んでたらいつの間にかジェットコースターに乗せられてドーンと落とされた感じ。


以下少しのレポとネタバレありで更に感想書きます。他公演のネタバレもあります。



最初のヒーローショーでいきなり人が刺される、という不穏な出だしの割にはゆるい、楽しい感じで話は進んでいきます。今日は千秋楽のせいか特にみなさん伸び伸びと演じてる感じ。平田さんの重岡へのキス攻撃は凄かった。
森木の台詞間違えは凄いし。犯人は誰かわからない、という風な台詞を言うべきところで「誰が誰だかわからない!」と言い放ってたしw
ところどころでヒーローショーに出ている主人公に駄目な過去があって、問題を抱えていて落ちぶれているところや、病気の子供や隣の病室の家族が妙に引っかかる事を言ってきたりはしますが。
主人公(そうです、名前忘れました…。名前覚えるの苦手なんだよう)を刺した犯人はわからず、マネージャーは10年前一緒にヒーロー戦隊ドラマで競演していた2人を疑います。ブルー役だった男はドラマが打ち切られる原因になった主人公を恨んでいるはずなのに、何故か田舎の病院まで主人公を見舞いに来たりと怪しい。ピンク役の女も「刺したのはブルー。逃げた方がいい」とわざわざ言いに来て、事態は混乱していく。
そんな中主人公は入院している10歳の男の子、シンジと知り合います。シンジは10年も前に主人公が出ていたドラマのファンだと言います。亡くなったお母さんがファンだった影響だと。お母さんは人は死ぬと星になると言っていたと話します。
誰が刺したかでもめる大人たちを見て、シンジは「こんなのヒーローじゃない」と悲しみ、主人公は「みんなを疑っていない」と言い、そして10年前ファンの女の子に手を出した挙句に妊娠させ、それが原因でドラマが打ち切られた事を初めて2人に謝ります。
そこへ警察からマネージャーへ電話が来て、どうやら主人公を刺したのは通り魔だったという事がわかります。みんな主人公をただ心配して来てくれただけだった…。和解する3人。
そして主人公はこの事件がきっかけで仕事が入ります。調整のために東京へ戻ろうとするマネージャー(ちなみに仕事は「オカマだらけの水泳大会ボロリもあるよ」です)
子供役のピクニックさんは凄くぶたれたりするので大変そうでした。笑えない見せられないくらいのアザが出来てるそうで。

ここまでで、完全にいい話だと油断するわけですよ。大団円で終わりなのかと。ところが話は物凄い展開を見せます。私も、シンジが主人公の子なんだろうな位は思ったんですが、それどころじゃない。

帰ろうとするマネージャーに電話が。警察からで、主人公を刺したのは捕まった通り魔の犯行ではないと言われます。慌てて戻るマネージャー。
その頃病院の婦長(主人公が刺された時に応急手当をしてくれてます)がナイフを持って主人公の病室へ。目が覚めて驚く主人公の前に、院長や隣の病人、その娘もやってきます。マネージャーも戻ります。
実はこの人たちは全員、かつて主人公が妊娠させたあげくに逃げたファンの女の子の家族でした。その時マネージャーは女の子や家族に謝って、話を付けて来いとお金まで工面したのに、主人公は会いにすら行っていませんでした。更に、その女の子は家族に頼らず女手ひとつで病弱な息子を育てようとしますが、心労が祟って自殺してしまっていました。
憤る家族をなんとかなだめようとするマネージャーですが、院長に刺されて殺されます。主人公は婦長に向かって「じゃあなんで助けたんだ」と。すると婦長は「殺すのは私の役目ではない」
振り返るとそこにはシンジが。彼は言います「とうちゃん」
主人公は命乞いをしますがシンジは「もう遅いよ」
そして殺した後「かあちゃん、とうちゃんはスターになったよ」

もうね、最後のピクニックの台詞がもう。背中がぞくぞくして鳥肌が立ちました。凄かった。
考えるとだって、10歳の子が自分の意思で仇を討とうは思わないですよね。お母さんが死んだ後で周りがそう仕向けたわけですよね。
女手ひとつで子供を育てようとしてた女性が、子供に父親の恨みつらみを言うとも考えにくいですし。主人公は女の子の家族にしてみたらただの他人かもしれないけど、シンジに取ってはどんな親でも親なのに。それにシンジには人を殺す事の意味がわかっていたんでしょうか。もしや本当に父親をお星様にしてあげた、くらいの意識だったのかも。これは穿ちすぎかもしれませんが。
マネージャーも責任の一端はあるとはいえ、殺されちゃうし…。
今までの神保町の公演の中でも飛びぬけて後味悪いのでは。
「頭蓋骨を抱きしめて」も強烈でしたが、あれだって最後安達が殺そうとするほど憎んでいた相手をかばって死んでるわけで、私はそこは救いだったと思うんです。せめて最後は人らしい感情を取り戻して、憎しみにだけ生きたわけじゃないから。「カーテン」も死人は多かったけど舞台設定が内戦中ですし、人の為に死んだ人も多かったから後味はそれほど悪くなかったし。
考えれば考えるほど、暗澹とする終わり方だ…。

でも演者のみなさんが演技達者でとても面白い芝居でしたよ。こういう、後を引く話、考えさせる話が好きだし。芝居でリアルにぞっとしたのは久しぶりでした。行ってよかったです。

by hyakurin | 2008-05-12 01:53 | お笑いライブ | Trackback | Comments(0)

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